大友克洋

安い藁半紙のような『アキラ』の単行本が姿を消してから、いろんなものに手を出すようになった。
とくに『童夢』はこれ以上の超能力の描写を探すのはむずかしいだろう。
もちろん『アキラ』にも「アニメ化の必要があるのか」という議論(古いなあ!)があったものだが、『童夢』には、警察を絡めたサスペンス性(超能力漫画と思わないで読んだひとは幸せすぎるだろう!)それ以上に「子供と老人」という大友克洋の描写の大きなテーマがある。
いったい、大友克洋の漫画ほど「子供と老人」がたくさん出てきて、それが恐ろしくも魅力的なものがほかにあるだろうか・・・。テーマ性が深すぎるかも知れないが、子供や老人が確かに恐ろしいものだということを強調しておこう。これらが大人の庇護のもと、当の大人にとって、警察の眼などからも、いかに死角となってしまうものかが『童夢』には描かれている気すらしてくる。その超能力のたたかい、ぶつかりあいは、やがてくるべき世代の、社会構造のなかでのぶつかり合いのようにも思えてしまうほどである(そりゃあ明らかに言い過ぎだ)。
大友克洋の作品の中では、子供も老人も、まったく等価であって、これは多くの古典的な芸術家の習作でもおなじであったはずだ。ヒトならば子供と老人を描いていてこそ絵師は楽しいのではないだろうか。こうなると、絵書き、といったほうがしっくりくる。