2007-01-01から1年間の記事一覧

第1回 錬金術の叙階定式書 マイヤーの碑銘と第1序

さて象徴的言辞に満ちた『12の鍵』と、やけにプラクティカルな皮を被ったクレマー院長の間に置かれた第2論考、トマス・ノートン『叙階定式書』をお送りしていこう。なかなか本題に入れないのがまた錬金術文書の厄介な問題でもあるけれども、文書ごとの立場…

マイヤー『黄金の鼎』のイラスト

ミハエル・マイヤーの編纂した錬金術論集『黄金の鼎』は(1)バシリウス・ヴァレンティヌス『12の鍵』 (2)トマス・ノートン『我を信じよ、あるいは錬金術の叙階定式書』 (3)ジョン・クレマー『信仰告白』 の3つの、有名かつ伝説的な錬金術文書を収…

疑似科学?に関する覚え書き

錬金術文書の翻訳、なんて、すこぶる非科学的そうなテーマにどっぷり漬かりながら、普段はけっこうエセ科学批判にアンテナを立てていたりもする。疑似科学や似非科学について調べてみると、自分の持っている思いこみの傾向が、びしばしとコペルニクス的に展…

第6回 院長クレマーの告白

・・・気を取り直して第5章、いってみよう。 第5章 2ポンドの純粋で柔軟な鉛、2ポンドの純粋な錫を用意し、充分に封印した上記の陶器のなかで溶解せよ。全てを3時間ほど穏やかな木の炎に焼べよ。混合物の全体が純粋透明になるまで、鉱金属の「泡沫」は…

錬金術逍遙譚

ミハエル・マイヤー編纂の『黄金の鼎』、その一角をなす『院長クレマーの告白』ですが、第1回の冒頭に錬金術逍遙譚がありました。勢いづいて『太陽の光彩』巻末にあるトリスモシンの冒険も掲載したりしていた矢先。久しぶりに入った新刊書店でGETした「これ…

第5回 院長クレマーの告白

第4章 3の月15日ごろに、3オンスの水銀を用意しそれに半オンスの《生ける水》を加えよ。この水銀は、洗剤で浄められてよく乾かされた濾過器に5度通せ。2ポンドの鉛を溶かし込んでこれを瓶壷に注げ。それが液状になったら、そこに細い棒状の串を刺し入れ…

第4回 院長クレマーの告白

第3章 硬く澄んで一点の染みも無い8オンスの鉄鉱石を3あるいは4割、つよい木炭の火で精錬せよ。それを充分な処女の水で消すべきだが、これについては目的に必要とされるに足るだけ第2章で記されている。そして3オンスの錫を用意し、これに短時間熱を加…

第3回 院長クレマーの告白

第2章 三から四晩、睡眠から覚めた朝一番の汚れなき若者の水を3パイントになるまで採取せよ。それを毎晩、固定された石製容器に溜めよ。沈殿する澱は取り除くべきである。液体の透明純粋なところを1パイント濾過せよ。かなりの強酢を2グラス、2オンスの…

本家サイト Macrocosmの移動

管理人のISP変更のためひと月ちかくネット活動を停止してしまいました。これにともなって突然のサイト閉鎖、たいへんご迷惑をお掛けしております。とりあえずですが以下のアドレスに再びサイト公開しております。今後とも宜しくお願い申し上げます。錬金術と…

第2回 院長クレマーの告白

第1章 我らが術の生命を構成する生ける水の調合法 鮮やかで純粋なる紫紅の酒石を3オンスほど用意せよ。そこに5オンスの石油、2オンスの天然硫黄、2オンスの橙色の砒素、3オンスのラビュセヌム、2オンスの柳の木炭を加えよ。これらすべての構成要素を…

第1回 院長クレマーの告白

『院長クレマーの告白』は、あるベネディクト会の修道院に伝わるとされた術の秘奥書であり、成立年代は明かされていないものの、バシリウス・ヴァレンティヌス『12の鍵』と、トマス・ノートン『我を信じよ』とともに、『逃げるアタランテー』の著者ミハエル…

第8回 キャラクター(登場人物)について [随時更新予定]

登場人物の性格からうまれるドラマ性、という意味での内容・ストーリーはまったく重きを置かれるものではないので、キャラクターにあまり重要な意味はない。それゆえにか在る程度スターシステムを思わせるマンネリズムもあって、読者はこうした或る意味での…

A.F.SmkIIオープン仕様

けっこうまともに傭兵軍カラーをやるつもりが、オレンジの部隊章を入れてみたらなんだかMaMo本のシュトラールDCU迷彩みたいになってしまった。うーむ、まあいっか。さてそろそろデカールでも貼ってクリアー塗りますか。ついでに下地塗りをやって風情があきら…

第7回 はたらくカッパについて(ネタバレ注意)

北海の街に住むアンヌは病身の父に代わって働くため就職面接に赴くが、ひょんなことからカッパ族の末裔たちが生きる潜水艦「たこぶね」に乗り込み、まかないとして雇われ、カッパたちとともに数々の冒険に巻き込まれることになるが、買い出しで上陸した街で…

A.F.S.mkII

いちおう塗装の方針が決まったかんじ。 パイロットはフィギュアセット2からフレーダーマウスのおっさん。 シュトラールのひとなはずだけど気にしない気にしない。 頭のラインをそのままにしてしまった・・・。 ハッチ内部がこんなふうなのかどうか知らんけ…

A.F.S.mkIIとArchelon

アーケロンであまるAFSのボディをがしがし切り通してオープン仕様にする。 プラがやわらかいのでニッパとカッタだけでけっこういける。 隙間をコード類なんかで埋めてソレっぽくしてみる。 ついでに腕と足もどんどん組んじゃって、一晩つけおき洗いしたレジ…

第6回 赤タイツ男について

その濃厚さが魅力であったにせよ、クリエイタはいつまでも古い手法・形式を引き摺るわけにはいかない。読者に媚びて内容の変転にばかり気を取られた作品は時代のニーズに応えて華やかに受け容れられることがあっても根無草のそしりは免れず往々にして短命で…

第5回 ネコカッパについて

境界線上の出版物をてがける勇気ある出版社として河出書房は貴重な存在である。かつて澁澤龍彦の著作を読むにあたって中高生のころからだいぶ文庫で世話になってきたし、安島真一氏が頑張ったおかげでエルンストのコラージュ・ロマンもすべて文庫化したりと…

第4回 ケキャール社顛末記について(多分にネタバレ有注意)

180頁に及ぶ長編。おなじみの女の子とネコ社長のケキャール社が倒産、二人は思いつきでインドへと夜逃げしてゆく。道ばたで妖しげなものを売る怪人うさぎから多額のインド紙幣を交換してもらい、どこへ向かうのかよく分からない不思議な座敷電車に乗り込んで…

第3回 馬馬虎虎について

短編集『馬馬虎虎』は「マーマーフーフー」と読み、ジャケットでは「馬」の字も「虎」の字も簡略体の中国漢字のような書体が使われているため、検索などでは必ずしも「馬馬虎虎」ではヒットしない。Amazonでは「mamafufu」となっている。ウェブ上の記事では…

第2回 『象魚』について

短編集『象魚』は、後の逆柱作品にはめずらしく、生活感というか「夢を見る前提の境涯」が描かれている感覚がある。実際に「ビンボー」かどうかは別にして、ふらりと散歩に出掛けて海辺の町や街を菓子パンなぞ食べながら歩いたり、うらさびれた食堂で気軽に…

光文社版『海神記』

うかうか模型脳になっていると諸星大二郎『海神記』というマタ別のディープなしろものが到着、予約していた下巻が発売になって発送になったもんだろう。じつはこのブログ、検索ヒットがいちばん多いのはこの「海神記」というワードで、ずっと以前にちょっろ…

MODELKASTEN製Archelon

モデルカステン製アーケロン到着、はやかった。 オリオンモデルズで注文受付が開始した「傭兵軍女性パイロット」が9月中旬に発送予定だというので、アーケロンももうちょっと時間がかかるもんだと思っていた。 イソイソと梱包を開けてみると久しぶりのマシ…

第1回 単行本ベースの資料

■象魚 1994 10/5 初版 青林堂 《目次・初出》骨 1993ガロ7月 人参 1993ガロ4月 マナティ 1993ガロ2・3月 金魚 1990ガロ10月 耳 1990ガロ11月 影 1990ガロ11月 隕石 1990ガロ11月 鯉(夏の日の鯉) 1990ガロ1月 動物園 1990ガロ6月 四コマ漫画 描き下ろ…

ドナム・ディ 第13図

以上、ドナム・ディこと『いとも貴き神よりの賜物』からの全訳完了。 「プレティオシシマム・ドナム・デイ」は初期錬金術文学の重要な作品で、古い版は様々だが基本的には12葉の挿絵が付属している。今回の翻訳にはミュリウス『黄金の解剖術AnatomiaAuri(16…

ドナム・ディ 第12章

第一二章 白さはルビーのごとき鮮やかなる赤に変えられ、これが赤化のエリクサである。 白きラトナを用いよ。汝が念挫かれることのなきよう、書物をば引き裂くべし。われらの術はたやすきものであり、かつ裨益なるものまことに少なきなり。余を白くする者は…

"カ焼"について

上の『ドナム・デイ』11章でも2箇所「カ焼」という言葉がでてきているが、本来は左のような文字になる。MacOS上でも新しいユニコードの文字が編集できるアプリケーション(普段たいがいの原稿はLightWayTextを使っている)なら問題なく表示されるが、こころ…

ドナム・ディ 第11章

さて少々夏休みしていたら遅れが出ましたが、次回12章で完結でございます。 第一一章 灰はかがやく大理石のごとき白へとかわり、それが白化のエリクサ、灰よりつくられる。 物質の資性は熱が与えられなければ変化することがない。よって汝、能く熱を御し水と…

アレクサンドル・ソクーロフ『太陽』ロシア・スイス・伊・仏(115分)

埼玉県川口市のSKIPシティというところはモノスゴイ映像施設で、NHKのアーカイブス用のビルとか早稲田大学の分校が入っていたりする。ここでは毎週末にウィークエンド・シアターと銘打って旧作・話題作の上映をやっているが、ここが持っている上映室もかなり…

ギヨーム・ド・ロリス&ジャン・ド・マン『薔薇物語』

ちくまで『ヘルメス叢書』でも再刊されるんじゃないかなんて言っていたら、中世ヨーロッパの寓意大全たる『薔薇物語』が文庫化された。当時の自然哲学にもとづいた記述も満載だから、錬金術文学としてもかなり高名な書物である。こんなものが8/8に文庫で発売…