第4回 蒸留


 物質を明らかにした後、哲学者の最初の趣意は水を与えるべきことであるが、これについては多くの名前で註記が繰り返されてきた。なかでも「鋭い酢」というのが頻繁に語られた名のひとつである。二つ目は「溶解せる水銀」であり、第三は「沼沢の水」である。「溶解せる水銀」のもつ働きは壊死解体であるが、これが金属を自然な壊死に解体して霊気の力を活発化させるのである。けれどもこれらに活力が与えられるには自然力を掻き立てる必要がある。とはいえ「溶解せる水銀」が乾燥してしまえば自然の激情は期待できず、むなしい結果のなかに解決を期待することはできない。
 それゆえ「溶解せる水銀」あるいはこの沼沢の水を得るためにとられた効果的な方策があった。これらとともに蒸留をすることは、すなわち容器中に於ける水分蒸気の上昇であり、そのなかには高貴と野卑という石のふたつの部位が存することになる。そこには蒸留によって希薄になりゆく上等の部位があり、これはとりわけ、ふたたび地が閉じ乾き、水が清く洗浄になり、風と火が色彩をもたらすときに再興する。
 アーノルドが述べるところでは豊かな水と風が不可欠であり、というのも染色素の夥多は風の多さによるのだが水は除去であり医薬の構成要素のすべてを清める動因だからである。頻繁な蒸留というものが重要なる元素の洗浄とされる所以である。
 ゆえにこそ、蒸留のもとに石が四つの元素に分割されることが不可欠である。まずは、つよさを変えずに熱するよう加減された仄かな火をもちいて水を得るがよい。さらに火が火を受け入れ混じるほどに徐々に勢いをつよめるべし。容器の底に燃え残ったものは乾いた地であり、そこには結晶化した石の塩基が隠れている。下方に残る赤みから、火の存することが判る。上等の循環があれば、容器中に物質のあることが判る。煙霧がたちこめつつあり、蒸留するにしたがって煙が雲のように昇るのが見える。