神田古本市

もう何年ぶりだろう、久しぶりに行って参りました。
近年あんまり元気がない出版事情もあるでしょうけれど、神田の古本市ってのは、いつ行っても代わり映えのない「古すぎる」本がならんでて、ナニかありそうな・・・という予感のもとに群集をかきわけカキワケ探るものの、そんなに大した発見もない。そういうジレンマばかりが残るもんです、そんなもんです。
欲しい情報がはっきりしていて、インターネットで検索、ズバリと書籍を注文できるこの時代。それでも、たまたま出会った本にポイッと金をだしてみるような衝動には、書籍選びの初心にでも立返るような心境があるように思います。
ナンダ神田(そういう洒落いうと嫌われるよ兄ちゃん)いっても以下の書籍を買って帰る手が重かった、ああオモカッタ。

写真は、昭和16年幸田露伴
野球のボールが庭にはいっちゃって、こんな老人が出てきたら
「うわっっっっ!」
ですね。以下の本のトビラについてました。
ほとんど仙人。いやそのもの。

講談社版・日本文学全集『幸田露伴』 450円
新刊の本屋さんではなかなか見付からない幸田露伴の全集。現代人にはたぶん、読みにくいんでしょうね、幸田露伴はルビをふられまくった紹介程度の新版しか刊行されてないみたい。『新浦島』とか『五重塔』みたいなデモノロジック(悪魔崇拝的)の露伴小説が好きなので、編集内容をみて即買いました。汚えワゴンセールでしたが。(収録:風流仏/毒朱唇/封髑髏/艶魔伝/骨董/連環記など魔物多数!)

久生十蘭『魔都』『地底獣国』800円 500円
いまはもう手に入らない社会思想社教養文庫。どっかのなんかの全集では読めるんでしょうが、あたしゃあ子供の頃からこのシリーズが大好きでして。文庫だから寝ながら読めるしね。それに版組とか使われてる字体が、いちばんシックリくるんで、古本で見掛けたらできるだけ買うようにしています。汚いのに高価になってしまったのを買わねばならんのは、若い頃に小遣いをけちった罰だとおもって甘んじましょう。「異端作家傑作選」の久生十蘭ものはこれですべて揃ったかな。

■吉田八岑『悪魔考』薔薇十字社 2000円
西洋の暗黒史に跳梁する悪魔崇拝の実情を詳しくまとめた書物。斯道のさきがけ的な書物なだけに、学問的な価値を問うようなものではないのでしょうけど、読み物としてひじょうに面白いです。吉田八岑のスタイルが光っているからだと思います。

■鷲巣繁男『呪法と変容』牧神社 2000円
めずらしく詩の本、というより評論集なんですけどね。なんか恐い魔術書じゃあないですよ。鷲巣繁男さんは、地に足のついた労働者と、聖なるものとその詩想との掛け橋みたいな偉大な詩人、心の中にカテドラル。

■オットー・ゼール『フィシオログス』 1200円
西暦200年ごろに成立していたらしい動物史の書物です。アリストテレスとかプリニウスなんかは、気になったら図書館でも読めるでしょうけど、「フィシオログス」はあんまり見かけないし、この値段なら買って持っててもいいかな、と。これは先日買った『中世動物譚』という、動物寓意に関する書物に出てきたものだったので、「アッこれは」と思って買いました。邦訳されてたのですね。錬金術文書や寓意図にも動物がたくさんでてくるのですが、古代から人類が抱いてきた「動物の意味」をリファレンスしやすい書物です。

イアン・リビングストン『死のワナの地下迷宮』 200円
教養文庫アドベンチャーゲームブック。こどもの頃あそんだので懐かしく購入。

こうして合計7000円ほどもクズ本ばっかり集める。