装甲騎兵ボトムズ【クメン篇】


テンションが高い! 終戦後のすさんだソドムとゴモラたるウドの街もそうだったが、灼熱の熱帯に展開する内乱という筋書きなど、まったくもってこのボトムズっちゅうアニメは、日本でなくては作り得なかったんじゃないかなあ、という感慨を禁じ得ません。前回の「ウド篇」では少々フラストの種になった展開の怠さ、設定の古さが、クメン篇ではすっかり外れた感じ。熱帯雨林のディープな戦闘ゾーンで、ATの激しい戦闘が繰り広げられる。その背景には、政府の対立、宗教、近代化の理想と古き良き時代との葛藤、一攫千金を求める傭兵たち、善良な市民と戦争、ゲリラ。

・・・戦争をめぐるあらゆる基本的な問題がぜんぶドラマの中に詰まっているからスゴい。

第1部「ウドの街」には、戦後日本が生きた闇市のイメージと、そこに蠢いていた上層部の欲望、そして、有無を言わせぬものどもに、とことんまで食い物にされていた下層社会の姿、その地獄絵巻の様相が、まざまざと描き出されていた。であれば、この第2部「クメン王国」の熱帯に傭兵たちが生き抜いた内乱の地獄には、ベトナム戦争の影がつきまとっていたように感じても、強引な解釈とは言えないのではなかろうか。ウドの街の崩壊から、再びキリコは政府からも軍からも追われる身となって内乱のクメンに傭兵として身を投ずることになった。近代化の旗を掲げ、傭兵による兵力の増強をはかるクメン政府。これに対するは、伝統宗教を背景に旧王朝を擁立し、背後から「秘密結社」の援助も受けているゲリラ軍。むせ返るような熱帯原野の戦いのさなか、新たなPSたるイプシロンとの出会い、フィアナを中心にしたはげしい愛憎劇が展開する。

見所は、多彩なATの登場と戦闘シーンでもあるが、ウド旧来の仲間たちに加えて登場しはじめるなんともアクの強いキャラクター達である。主人公の魅力に意味もなく群がってくるような安易なサブ・キャラクターは独りもいない。それぞれが理想であれ野望であれ、なにがしかの意図を胸中に秘めて、もつれにもつれたドラマを形成する。

テーマの古さは否めないけれども、舞台は熱帯雨林の密林に、各々のアツい想いはすべて命を賭したもの。
いやあ、クメン篇、なんともこれは、アツすぎます。