第28回 錬金術の叙階定式書 第5章(11)

また匂いの感覚もまた、支配的な元素を認識するにあたっての指標を汝に与えるであろう。匂いは色が与える指標とともに、元素の結合における「第一動因」の探求を示唆する。白と黒のふたつが色の極致であるように、悪臭と香気は匂いの極限である。だがしかし、眼に閉じるべき瞼をもたぬ魚が中間色を認識できぬように、我々人間の嗅覚も中間の匂いを鋭敏に捉えることはできない。魚の眼とおなじように、我々の鼻孔は閉じることが出来ないからである。このように、中間の匂いは眼で中間色が認識されるほど明確には鼻孔から認識できない。賢者らの意見では、中間の匂いに忌避すべき悪臭は無いものの、ただ一種のみ若干の悪臭をしめすものがあるということである。経験から結論されることとして、賢者らの書物にはそのように注意が促されているが、私自身はこれについて経験に即した知識を持っていない。しかし、甘く香しい匂いを浸透性の強い悪臭の風味のひとつと混合させれば、香しい香りがたちこめ、悪臭の方はほとんど消え去るということである。先人たちがこれを強く主張するのは、何であれ香しい匂いは悪臭より純粋で霊性たかく、そのために容易く「風」を貫き、生命あるものを悦ばせて自然に調和し、悪臭よりはずっとたやすく受け容れられるものであるということである。匂いというものは、滲出作用に似て、熱に溶解された蒸気的煙霧であり、ゆうゆうと「風」に入り込んで汝の嗅覚を刺激する。これは汝の口が食物に、あるいは音に聴覚が、色に視覚が、影響されるのと同じである。

鼻マブタ?その比喩はちょっとセンスがアレですよ、ノートン師匠…

アレクセイエフの『鼻』が観られるとは!