『綺想の帝国』他

■トマス・D・カウフマン『綺想の帝国』工作舎
古本屋にて安価に。ひところ平凡社とか青土社、リブロポートなんかで躍起になって出版されていた魔術・ルネサンスがらみの一冊ですね。いまさらルドルフ2世とかアルチンボルドがどうとかいうのもコッパズカシイかんじですが、10年前くらいを思い出しながら、またぞろ「驚異の博物館」に立ち返ってみるのも一興かと思ってます。専門家が怠惰でなければ、日本でもっとおもしろい展覧会などが企画されるはずなのになあ、と思ってしまうジャンルです。

ついでに・・・

久生十蘭『無月物語』今は亡き社会思想社の文庫
ハナシのハヤい文章が硬派で大好きです。「湖畔」からちょっと引いてみましょうか・・・。

「最近、測らざる一婦人の誠実に逢着し、俺の過去はあまりにも虚偽に充ちていたことを覚り、新生面を打開しようと決意したが、俺は意志薄弱の徒で、実社会に身を置くかぎり、因習に心を煩わされてとうてい自己に真なることができぬと思うから、いっさいの因縁を断ち切ッて無籍準死の人間となり、三界乞食の境涯で、情意のおもむくままに実誼無雑
の余生を送る所存なのである・・・」
ひゃあぁ、もうスルメのように噛めばかむほどジワリとなんかがでてくるスタイルですなあ。かっこよすぎ、真似できねぇや。