●衿沢世衣子『向こう町ガール八景』

雨の合間にのぞきでた陽光を逃さず外出、シャツいちまいでバイクに乗れるのはココ最近では珍しく壮快だが、けっきょく入るのは本屋さんなのでまたじめじめ日陰ゾーンにどっぷりという流れが避けられない。気付いてみれば新刊が揃いのいい本屋ってのもあんまり行かないもんで、久しぶりにそういうところへ入ると、あーこんな本も最近出てんのかと気付かされることもしきり。古書ばかりあさるクセに陥らないように注意が必要なのはわかっちゃいるんだけども。こういう日のこういうときには、漫画を表紙で選んで買っちゃうバクチをうってみたくもなる、二度ふりかえった表紙にはナニかあるぞ、とか。で、今日目に留まったのが衿沢世衣子というひとの『向こう町ガール八景』、なんにもしらないんだが、ただ、そうだな、高野文子の絵によくにた作家だな、という印象があったんだろう。小脇の数冊とともに迷わずレジへゴー。いま、どこにでもいるような女の子たち八人の物語で、彼女はみんななにかしらの「違和感」を抱えている。そういうところをテーマにしつつも、カラリとした表現の中でこれがなかなか笑えるんで、あまり「あーあるある、そうそう」という共感などは必要でもないかんじ。もう最初の短篇『BALL』の「ファビュラス塾」でやられてしまった。全体に、重くなりすぎず、さりとてゲラゲラ笑かすものでもない、バランスのいい表現をやるひとだなあ、と思う。こりゃあいいや。
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