大友克弘『スチームボーイ』2004 日本 130分


AKIRA』(1988)で“ジャパニメーション”の表現力を世界にアピールした大友克洋による劇場用長編アニメ。製作期間9年、制作費24億円という大作だ。時は19世紀半ば、舞台は世界初の万国博覧会を控えたイギリス。少年レイは、祖父ロイドと父エディが発明した謎の球体・スチームボールを手にしたことから、アメリカのオハラ財団の手の者に捕われる。連れて行かれたのは、巨大な機械の要塞・スチーム城。そこで財団は、超高圧の蒸気を封じ込めたスチームボールの力を武器として売りさばこうとしていた。レイはそれを阻止しようとするが…。単純明快な冒険活劇を期待して観れば案外小難しい部分もあって肩すかしを食うが、細部まで描き込まれたスチーム城の描写にはとにかく目を見張る。ダイナミックなアクションシーンなどはきっちり魅せつつも、王道というよりはどこかしらオフビート気味なのは、古い大友ファンにとってはむしろ吉報かも。

アニメの動きから近代イギリスの風景から、とくにアナクロ・メカの動作に気合が入っていた。気合が入りすぎてなにがなにやら、というシーンも多々。科学の進歩を主題にした話の流れはアリガチな感じで萎えるがマッドサイエンティストになっちゃうお父さんがイイ。全体的には『ハウルのものすごく動いちゃうアレ』ってところだ(ハウルのアレは決してよくないけど)。・・・でもなあ、うむむ、ううん、10年かかったのはいい(10年でCG技術って随分進歩しちゃうからな)し、かかった金もまあいいとしよう、しかし作り込みに気になるところが多くて、その類いの映画にしては集中できなかった。全体に画面の色使いが暗い。明暗のメリハリが足りないのか、どうか。
アキラ、を観れば充分、とか言っちゃう。