シャーリーズ・セロン/クリスティーナ・リッチ演『モンスター』2003 アメリカ/ドイツ 109分

R指定なのは娼婦がどうのとかレズビアンの要素があるからとか、なにより救われない物語に若者は耐えられんだろうということなのかどうかな?

なにしろ、やっと見つけた愛(それが友情だろうがレズだろうが)のために連続殺人鬼にまで堕してしまう決意を前にしては・・・さすがに比較してはいかんのだろうが・・・『くあどろふぇにあ』のもやしっ子どもが精一杯がんばった青春スクーター破壊なぞは、もはや児戯にも等しいことになってしまう。暗闇のなかを生き抜いてきて、これでもはや死をすら決意した、というときに出会う少女への愛情、それはたしかにレズビアンの形ではあったのだが、極めて人間的な「友情」としても描かれており、これはこの映画の見事なところ、女性の監督によるところ(初監督?すげえな)と、なにより俳優が素晴らしい。(バッファロー'66もまた5本の指に入る傑作だと思っているわけだが、K・リッチって、そういう役に使われやすいんかな・・・人生に潤いを与えちゃって拉致される・・・)

だが、はじめて人間らしく生きることを決意しても、もうすでに社会・世間は彼女を人間としては認めていない。歴史の問題もあるにせよ、階級社会のなかの実存のテーマって、観ていて非常に苦しいもので(彼女はベル・ボーイにすらなれないんだぞ! おい、モッズどもよ!)最後の拠り所として少女を守ろうと、人間とならんとすればする程に立ちはだかる現実を前に彼女は「モンスター」にならざるをえなかった、だが、その切り裂くようなストーリーは本当にただ「救いようもない」ものなのか?

自分の大事なものを守ろうと世間の冷たいカゼと闘っても尚、その思いが通せぬ伝わらぬ苦しい人生の経験者であれば、レズビアンでも犯罪者でもなくたって、このふたりがただの「享楽者」ではないことが理解できるだろうに。

それでなくとも、主人公が少女と出会ったことだけにも、なんとか光をみたいものだが・・・そんなのは、ちょっと無理のあるこじつけにすぎないだろうか。12年の服役の後に死刑、死んだ方がましな人生? 死刑はせめてもの慈悲とでも? とはいえ殺害された被害者の存在だって考慮に入れんワケにはいかんだろうに! 育った環境? 性的虐待? ああ、人間とは、愛を求めて飢え、かくも難しきものよ! そんな深淵を覗かせてくれただけでも、大成功な映画だと思う今宵満足なのだよ、そしてなんとも肩が凝っているのだ。

ところで『バッファロー』は1998年なのね、こっちのほうがK・リッチはこどもに見えたが・・・たぶん娼婦としての演技に気合を入れすぎた主演セロンの陰がおおきすぎるんだろうなあ、いやあ辛いながらもいい映画。さらに『アイリーン「モンスター」と呼ばれた女』というドキュメンタリーなんてのもある様子だがそんなもんはもう見たくもなんともない。つらすぎ。