ブラッド・ピット演『トロイ』2004 アメリカ 163分

ブラッド・ピットオーランド・ブルームからピーター・オトゥールまで新旧のスターが共演したアクション超大作。紀元前のギリシャで起こったとされるトロイ戦争を題材に、トロイの王子パリスが、スパルタの王妃を奪ったことから、ギリシャ全軍がトロイを攻撃する物語が展開される。ギリシャ軍に属する無敵の戦士アキレスと、パリスをかばう兄ヘクトルの闘いが最大の見せ場だ。トロイの海岸に攻め入る無数の兵士や、海に浮かぶおびただしい数の軍船など、CGが使われているとはいえ、映像のスケール感には終始、息をのむ。アキレス役のブラピは、戦闘シーンはもちろん、ラブシーンでも肉体改造による筋肉美を見せつけ、最近は少なくなった本物のスターとしてのカリスマ性を放っている。戦いの意味に悩みながら、戦士の本能が働くアキレスを中心に、あらゆる登場人物が心に複雑な闇を抱え、ドラマは重層的。ギリシャ、トロイともに「戦争の大義」が曖昧なため、混とんとした悲劇に本作のおもしろさがある。勧善懲悪ですっきりと感情移入できるハリウッド大作を期待する人には、2時間43分が長く感じられるかもしれないが…。

どうせスター映画だろ、とたかをくくっていたが、なかなか良かった。ありきたりのハリウッド映画にはない違和感があるような感じもしたけどそれについてよくまとめてあるサイトがあって、なるほどと頷かされる。ただ映画的に物足りないのは、役者に頼っているぶんかどうか、どことなくセットや小道具などがちゃちに見えてしまっている(そんなことないのかなあ?)ところで、そうだなあ、これは、『Lord of the Rings』をやたらに頑張って観た後だから、そう思うのかもしれない。

誰にお勧めの映画かって、それあもう言うまでもないんだから、映画的な価値も、みたまんま。でも歴史スペクタクル好きだったら一応みてもキライではないかも、というところ。個人的には『グラディエーター』のほうがずっと(カッコ)良かったけれど。

ギリシア神話の英雄は、ただ史実とか歴史とかだけじゃない重層的な、象徴的な存在だから、現代スターにアキレウス、とかやらせても、なんかこうしっくりこないんだな。叙事詩は演劇的に扱うのがいちばんいいです。