フリッツ・ラング『メトロポリス』ドイツ1927,120分


巨大な未来都市メトロポリス。富裕層との決定的な格差社会のなかで、弱者は地下に住むことを余儀なくされ、地下巨大工場で都市を支える過酷な労働に従事させられている。ある日、支配者ジョセフ・フレーダーセンの息子フレーダーは、地下労働者のこどもたちとともに地上に現れたマリアに出会ってこれに強く魅かれ、地下世界を訪れることになる。そこでのあまりの非人間的な生活を目の当たりにし、そしてマリアがこうした地下労働者たちに希望を与え続ける存在であることを知る。マリアは地下で集会を開き、支配者層と労働者たちをつなぐ媒介者が必要であり、それがやがてきたる地下世界の希望であることを説いていた。しかしこの地下生活者たちの結束を知った父=支配者フレーダーセンは、マッド・サイエンティストであるロートヴァングを訪れ、折しも完成間近であったアンドロイドにマリアの顔を与えるように指示し、労働者たちの撹乱を謀る。本物のマリアはロードヴァングに捕らえられ、機械のマリアが民衆を煽動しはじめる。偽マリアによって地下世界は希望を絶たれ、地上の風俗は頽廃し、やがてメトロポリスは上を下への大混乱に陥ることになる。労働者たちは偽マリアの導くままに地下工場の機械を破壊し、これによってコントロールを失った街は大洪水に見舞われ壊滅寸前となる。一方でフレーダーとマリアは脱出を果たし、地下世界の子供たちを洪水から救うために奔走する。マリアの煽動によって街を破壊し、それによって自分たちの子供が犠牲になったと思い込んだ地下住人らは怒り狂い、マリアを捕らえて火あぶりにしようとする。こうして愛すべき悪のアンドロイドを失ったロートヴァングは怒りに駆られてマリアを追い掛け、フレーダーとの格闘の末に大聖堂の頂から転落して死ぬ。メトロポリスはこうして安定を取り戻し、支配者と労働者そして媒介者の三位一体が聖堂の前で誓われることになった。

サイレント映画の古典的代表作。これだけすごい映画となるとモウ何を語っても陳腐になってしまうし、どうせ語り尽くされたような映画史的情報とか、賛辞を並べるしかないからあらすじだけ書くことになっちゃった、というところ。手元に置いていつでも観られるように今回は紀伊国屋書店のクリティカル・エディションを購入。ケースがなんだかずっしりと重いのは、40頁の解説冊子(上のあらすじはここに載っているものに加筆してもっとノリノリにしてみた)とか、特典DVDが入ってるからで、本編120分に加えて映画史的情報が殆ど網羅されている。

もはやどうでもいいことではあるけれども「女性の神聖視から蔑視へという極端な上昇下降感覚」とか「頭脳と技術と心の三位一体」などは、錬金術にもよくみられる重要なテーマではある。・・・それを言ったところで映画『メトロポリス』とは無関係だけれども。