第6回 院長クレマーの告白

・・・気を取り直して第5章、いってみよう。

第5章 2ポンドの純粋で柔軟な鉛、2ポンドの純粋な錫を用意し、充分に封印した上記の陶器のなかで溶解せよ。全てを3時間ほど穏やかな木の炎に焼べよ。混合物の全体が純粋透明になるまで、鉱金属の「泡沫」は除去すべし、そして4分の1オンスの紅石の粉末をそこへ加えよ。量塊の全体が赤くなるまで、それを鉄製の匙でゆっくりと撹拌する。72時間ほど瓶壷を取り除き、最後の3時間は、もう一度それを穏やかな木の炎に焼べる。それが液状である間は、いかなる形にも鋳造できる。それが硬化したとき、術の全ての極致が目前のものとなる。忘れるなかれ、諸手を上げて謝意を表明する祈りを全ての善を与えるものへ捧げよ。かくあれかし。

よくわからんうちに術式そのものは終わってしまったようだ。
次なる第6章は道具や素材にかんする注記らしいもので、それでこの書物は終わり。
ということで院長クレマー、いきなり最終回

第6章 金属溶解のための耐火粘土の製造法

好く練られた焼き物粘土、あるいはタクソニウムと呼ばれる白き土を用意せよ。それを馬糞の10分の1と混合させる。瓶壷が形成され、それが半分乾いたときには、赤銅かカルダリウム銅の金属粉と赤い砒素の粉末で封をする。完全に乾いたら、その下部の全てに、第一章で述べた《生ける水》で12時間かけて溶解された硝石を塗布せよ。

粘土の製造法
容器を留めたりそれを気密にしたりする、瀝青*の、生石灰漆喰の、卵の白さをもつ、少々白いアルメニアの鑞状粘土とよく混合された《粘土》を作るべし。石油を用意し澄んで清浄な黄色にすべし。ラビュセヌムもまた澄んで辰砂の朱に輝かねばならない。

*れきせい ビチューメン。古代小アジアでセメント・モルタルとして使ったアスファルト。そこから製する透明褐色顔料など。暗褐色の塗料。

私は、私たちのこの修道院の兄弟アレキサンダー士とリチャード士が、いとも神聖なる三位一体の名の下にこの信仰告白を複写し、念入りに保管することを望む。

まず第一に、彼らには機密を入念に保持させ、欲深く無法な輩からこれを遠ざけて、われらの修道院に刻が来たときに、大修道院長と副長以外にだけこれを開示するものである。支配力のもといかなる人間にも、我らの修道院の下位の修練士にすらも明かされることのない四福音教義へと、彼らが誓いを立てるまでは、秘蹟はかれらに知られてはならない。

さらに私の願いは、ここから私は稀鉱石の甚大なる宝物を萌芽させたので、不測の事態によるありうべからざる修道院の貧窮と荒廃の際をのぞいては、術そのものの実践は私たちのこの修道院のなかでは実践されないことである。私はまた、其方等、この修道院において権力もつ者、いわば大修道院長と副長に命ずるが、私のこの最後の遺志と信仰告白を毎六十年に一度複写し、時の荒廃を経て、あるいは、普遍の思索をなすこの書かれた文字の流儀作法の変遷を通じて、読みにくくならぬようにせねばならない。

尚その上私は其方に命ずる、赤龍の血潮、必要な物質の量、其等の処方、作業をなさねばならぬ刻などの秘密を、上記した者以外の人間存在へと漏らしてはならぬ。そして私は其方に厳命する、父と子と精霊の名に於いて、其方に約束された、完全で冒涜も破壊も免れた真実を保護保管すること。其方は何時の日か、キリストの審判席の前で私に答えねばならない。私の勅令を無視するものは、生命の書*からその名を抹消されるであろう。
*生命の書 天国にはいるべき人の名を記したもの。

マグネシア*は鉄より精錬された金属である。まだ混合物が黒い状態のときには、それは黒鴉と呼ばれる。次いで白くなってゆき、これは処女乳あるいは鯨骨と呼ばれる。その赤化段階では紅獅子と呼ばれる。青くなれば蒼獅子と呼ばれる。あらゆる色彩を身に帯びてそれは賢者らに虹と呼ばれたものとなる。だがこうした名の数は実に多く、私はただこれら少数をしか言及できかねる。さらにそれらはただ卑俗の者共を混乱させ、無知なる者たちからこの神秘を隠蔽する目的で発案されたものにすぎない。こうした奇異なる言葉や名前に満ち満ちた書物に出会ったときには、すぐに傍らに放棄するがよい。それは何も教えてはくれないであろう。
*マグネシア 錬金術師たちが賢者の石の成分の一つだと考えて探し求めた物質。酸化マグネシウムの白色粉末結晶

『院長クレマーの告白』といわれる書物の内容は以上で全てです。
やばい。生命の書から氏名を抹消されたかも。おなか痛くなってきた。
でも現代のGoogle八分よりはましかも。