第2回 太初の混沌について

 混沌は、未だ創造されざるところより初めて創造されし、最初の始まりである。全能の神が初めて創造したこれは、神の創世の術以前のものであり、それはかたちもない無秩序であった。けれどもその本質は、もっとも正統な賢者らによって後に明らかにされた。それは母であり世界の始まりの因であり、フィロンによれば自然であり、そのふところには数えきれない形相が秘められており、万能の建築者であり、偉大な術師であり、それは奔出の刻を命じる。未消化の物質中に最初に霊気を宿しているからである。混沌、それはある者は世界霊魂と呼ばれるべきであると断言し、ある者は形態の形状、またある者は創造者にひとしき糧とも呼ぶ。霊気が含まれているという恩恵があるゆえ、そこには隅々までも、神の最大の自由意思によって、万物が支度され、俯瞰されている。水から水のなかで分離はおこり、それによって万物は分かたれた。留意せねばならぬことだが、混沌の分離というものは、破壊的分解ではなく単に文節化であり、おのおのの節は生命と霊気に満ち、序列に従って隆盛し、すこやかに繁殖する。
 それゆえ事物の驚くべきちからは、化学の術における自然にかなって統御されるならば、人類の子孫たちによってひきだすことが、真の変成をもたらすことが、可能である。真の哲学者が思索したのも、自然そのもの、自然の可能態に他ならなかった。自然の平明さや純真さはまさに、そこに生きるものにとって充分なものであって、自然の営みのほとんどは、それ自身の能力と端緒に応じたところから為され、わずかの術の補助を頼りにして、歴とした作用を示すのである。
 混沌は、カバラ導師にとってふたつの意味がある。いわば知解と可視であり、ひとつは神からの直接の命令をうけての現象であり、もうひとつは同様の命の執行から即座に変化することの宣言とそれを知らされることである。
 さらに識れ。汝が白のなかにみるであろう点は地の中心に据えられ、白さは地それ自身の兆候であり、曲がった線は水の奔流の兆候である。それは自身の場所に在って地を覆い、いとも慈悲深き造物主の命をうけて、いくつかの部位だけを包んでいる。黒点に囲まれた白い円は風の兆候であり、同様に、黄金色の七つの小さな点は火を意味する。
 これらのことはこのように明かされ尽くし、次なるは七惑星が規則正しく混沌を巡ることについての思索である。これらの最初は土星であって、それゆえ土星は優勢をきわめ、しかもそれは他のあらゆる惑星を内包し、他のものたちは異なる命に従って休息している。こうしたことから、よく知られているのは、真の哲学者の意趣にしたがって、万物は万物の内に在るということである。土星それ自身は女性的で憂鬱質であり、木星は女性的であり粘液質かつ多血質であり、水星は女性的で粘液質であり、最後に月は女性的で憂鬱質である。