宮崎駿の兵器群像

この夏またチマチマと『風の谷のナウシカ』を読み通していて新たに面白いなあと再発見したのが、巻頭にあるカラーイラスト裏の解説地図とか設定メモ風のノートでした。…なんとなく各巻に色々とあるような印象でしたが、確認したら実は、5・6巻の「ムシゴヤシの成長」と「大海嘯」3・4巻の「トルメキア戦線図」くらいのものでした。とはいえ、宮崎駿の妙にホカホカと暖かみのある画風に特徴ある小さな文字でぎっしり説明が書き加えられている、いろんなところで見かけた気がする「メモ」あるいは「ノート」の風情は、アニメージュ文庫『風の谷のナウシカ 絵コンテ集』の雰囲気でも盛りだくさんなのですが、こういうものを眺めつつ妄想するのは楽しかろうなあ(劇場アニメ風に想像するのは容易いので)ということで、長年気になっていた『雑想ノート』『泥まみれの虎 妄想ノート』を買ってみました。かなり読者を選ぶ本?だと思いますが、Makとか(トホホSFメカの)模型も弄る私にはすこぶる面白いです。もともと模型雑誌の連載だったようですが、模型に興味がないひとでも、戦争の是非とかはともかく、宮崎アニメに出てくるおかしな兵器のたぐいとか、その周辺でおこる人間たちのドタバタが楽しめる人にはたまらないものがあるのではないかと思います。第1章はまさに上記の設定ノートの数々、イラストを見てにやにやしながらメモを読む、そして物語はまさに妄想、全8話。第2章からはコマ割されて漫画っぽくなりページ数も増えています、全5話。これの第12話「飛行艇時代」が映画『紅の豚』の原案のようです。こうした兵器たちの魅力が語られている序文がまた秀逸なので紹介しておきます。(モデルカステンのサイトhttp://store.modelkasten.com/shopdetail/013001000001/order/より引用)

この本に、資料的価値はいっさいありません。 あんまり人に自慢できる趣味じゃないんですが、ようするに軍事関係のことが好きなんですね。 くだらないなアと思いながらも、軍事関係のことが好きなんです。なんと愚かなことをするんだろう・・・と思いながら、なんてバカなんだろうと思いながら戦記などを読んでいるんです。でも、愚かだとわかりつつも、狂気の情熱みたいなものが、どこかで好きなんですね。 しかし、肯定しているかというと、そうではなく否定しているんですが、そういう矛盾が整理されないまま、ずーっとこの趣味を、もうかれこれ40年近くやっていると、色々たまってくるんですよね。で、それを出したくなるんです。ただ、自分はこういうことを知ってるよ!っていうのを出すんじゃなくてね。 実は、こういう趣味をやって行くっていうのは、人にはとても言えないことですけれども・‥頭の中で無数の空中戦をやり、無数の海戦をやっているんです。だから僕はシミュレーションゲームをやる気が全然起こらないんですね。ゲームなら、もう頭の中で死ぬほどいっぱいやっているから・・・死ぬほどっていうのはオーバーで、全然死なないけど(笑)。 だから、いったいどれほどの数の航空母艦や、どれほどの航空戦隊や、どれほどの数の飛行機や、どれほどの数のその飛行機のための工場なんかを、色々と頭の中で練り上げたかわからないんです。そういうことを、ああだこうだとやっているうちに・・・なにもそれは第2次大戦の飛行機とか、戦車に限らず・・・いろんなことをやっているうちに、何と変な物があるんだろう!とか、何と不思議なんだろう!っていうような妄想のカタマリを、まァ妄想ノー卜っていうん じゃつまらないから、色々な雑学の集まりとして描きたくなって描いたのが、雑想ノートという わけなんです。ホントは、いつもこれだけをやっていられると楽 しいんですけれど、これはまったくの趣味ですからね(笑)。ようするに、自然保護の問題をどうのこうのとか、少女の自立がとうのこうのとかね、そういうのは一切ヌキ!もう、とにかく!!

80年代漫画のあとがきの雰囲気が満載ですが、こういう、正統なオタク趣味そのものになら「資料的価値」があるんじゃないでしょうか。

それから『泥まみれの虎』のほうは完全にティーガー重戦車への偏愛で、現地調査にまで行って集めてきた資料も沢山載っており、コマ割されて漫画の雰囲気はありますが、ほとんど戦況や戦車戦についての解説。『雑想』よりも数倍確実に読むひとを選ぶシロモノでしょう、もはやティーガー重戦車が好きなひとにしか勧められません。

私自身、あんまり戦車の模型とかは作らないのですが、あの鉄の棺桶には妙な魅力があって、何年かおきに作りたくなる。
で、変なカタチの戦車とか大好物なのですが、いっぱい作ってもいられないので1台つくって満足したいとなると、これは代表的にティーガー戦車をということになる。んで、確かに作ったはずなのに手元には不思議と1台も無い…いつも作っているから塗装失敗で捨てる、誰かにあげちゃう、勝手に持っていくヤツがいる…このままだと一生タイガー戦車を作るハメになるわけですな、とかいう話を数年前にしていたら、良くできたラジコンを頂いてしまいました。(←これはじつにスゴいやつです。キャタピラは脱着可、上下左右に動く砲塔にエアガン式の砲を備えていて、空缶をヘコます威力なのです)
これは実に名案でして、これ以来もう作らずに済んでいるという大感謝なのです。

久しぶりに下ろして写真を撮ってみますと、我が家のトラは泥まみれでなく埃まみれでございました。へんな味わいが出てしまっています。
1/24らしいのでこうしてみるとけっこうマシーネンサイズですね。
最近人気の(胸元はともかく)整備士再登場です。