逆柱いみり試論

第8回 キャラクター(登場人物)について [随時更新予定]

登場人物の性格からうまれるドラマ性、という意味での内容・ストーリーはまったく重きを置かれるものではないので、キャラクターにあまり重要な意味はない。それゆえにか在る程度スターシステムを思わせるマンネリズムもあって、読者はこうした或る意味での…

第7回 はたらくカッパについて(ネタバレ注意)

北海の街に住むアンヌは病身の父に代わって働くため就職面接に赴くが、ひょんなことからカッパ族の末裔たちが生きる潜水艦「たこぶね」に乗り込み、まかないとして雇われ、カッパたちとともに数々の冒険に巻き込まれることになるが、買い出しで上陸した街で…

第6回 赤タイツ男について

その濃厚さが魅力であったにせよ、クリエイタはいつまでも古い手法・形式を引き摺るわけにはいかない。読者に媚びて内容の変転にばかり気を取られた作品は時代のニーズに応えて華やかに受け容れられることがあっても根無草のそしりは免れず往々にして短命で…

第5回 ネコカッパについて

境界線上の出版物をてがける勇気ある出版社として河出書房は貴重な存在である。かつて澁澤龍彦の著作を読むにあたって中高生のころからだいぶ文庫で世話になってきたし、安島真一氏が頑張ったおかげでエルンストのコラージュ・ロマンもすべて文庫化したりと…

第4回 ケキャール社顛末記について(多分にネタバレ有注意)

180頁に及ぶ長編。おなじみの女の子とネコ社長のケキャール社が倒産、二人は思いつきでインドへと夜逃げしてゆく。道ばたで妖しげなものを売る怪人うさぎから多額のインド紙幣を交換してもらい、どこへ向かうのかよく分からない不思議な座敷電車に乗り込んで…

第3回 馬馬虎虎について

短編集『馬馬虎虎』は「マーマーフーフー」と読み、ジャケットでは「馬」の字も「虎」の字も簡略体の中国漢字のような書体が使われているため、検索などでは必ずしも「馬馬虎虎」ではヒットしない。Amazonでは「mamafufu」となっている。ウェブ上の記事では…

第2回 『象魚』について

短編集『象魚』は、後の逆柱作品にはめずらしく、生活感というか「夢を見る前提の境涯」が描かれている感覚がある。実際に「ビンボー」かどうかは別にして、ふらりと散歩に出掛けて海辺の町や街を菓子パンなぞ食べながら歩いたり、うらさびれた食堂で気軽に…

第1回 単行本ベースの資料

■象魚 1994 10/5 初版 青林堂 《目次・初出》骨 1993ガロ7月 人参 1993ガロ4月 マナティ 1993ガロ2・3月 金魚 1990ガロ10月 耳 1990ガロ11月 影 1990ガロ11月 隕石 1990ガロ11月 鯉(夏の日の鯉) 1990ガロ1月 動物園 1990ガロ6月 四コマ漫画 描き下ろ…