第10回 錬金術の叙階定式書 第2章(4)

もし汝の心が美徳に忠実であれば、悪魔は全力を尽くして汝の探求を阻止するであろう。性急さ、絶望、欺瞞という、相次いで仕掛けられる三つの躓きの石がこれであり、悪魔が恐れるのは、汝がこの秘奥に通じて良き作業に成功することなのである。第一に、あま…

 第9回 錬金術の叙階定式書 第2章(3)

博学の者、そして学舎に通う学徒らは、こうした愚かな人物の悲劇の結末を耳にして、注意を喚起すべきである。かようなことに常なる配慮を欠けば、自身にもまた同様のことが降りかかると肝に銘じるのである。学徒の多くは、それが誤りであっても、書物に大胆…

 第8回 錬金術の叙階定式書 第2章(2)

更に別の例を挙げて、我が意図するところを明らかにしよう。あたかもレイモンド・ルルや修道士ベーコンのごとく、己がこの術に深く熟達していると思い込んだ男がおり、自らを比類なき者と称するほど高慢であった彼は、ロンドンからほど遠くない小さな街の司…

 第7回 錬金術の叙階定式書 第2章(1)

さて第2章の始まりです。第2章では、いろんな物語をノートン師が語ってくれます……が、ちょっと辛い話が多い。 「N」はノルマンディのNです。 かつてノルマンディに、様々な身分を股にかけ人々を騙した修道士がいた。この術について完全な知識を握ってい…

グレッグ・イーガン『万物理論』

正月ってのは、自分の意志に関係なくいろんなところに付き合わされたりすることが多く、『万物理論』を手に取ったのも、出先で空いてしまったマを埋める、なんでもいいから活字が欲しかっただけのことだった。あんまりSFの良い読者というわけでもないが、せ…

第6回 錬金術の叙階定式書 第1章(4)

以下、これにて第1章はおしまいです。 斯様なものが、いつ、如何にして地表にて増加しえるのであろうか。誰でも平均的な知性のある者であれば、水が凍ることやそれが場所によって多寡のあることくらい知っている。凝固前の水は、小川や溝渠では少ないが、し…

第5回 錬金術の叙階定式書 第1章(3)

さて汝、この叡智を求める者よ、虚偽から真実を見抜くすべを学ぶべし、錬金術の真の探求者は原因をさぐる哲学によく精通している必要がある。さもなくば、あらゆる労苦は無に帰することであろう。とはいえ真の探求者たるものは、みずからの責任に於いて探求…

第4回 錬金術の叙階定式書 第1章(2)

つづき……。いち画面で収まるくらいの長さかな、というところでUPしております。 この術が、その目指すところのために聖性を否定されるのも尤もなことではあるが、それでも尚この術は核心に秘めた理法のゆえに神聖視されて然るべきである。何人たりとも神の慈…

第3回 錬金術の叙階定式書 第1章(1)

『英国の化学の劇場』に収められた版に置かれている図像。 錬金術のイニシエーション。選ばれた者が天授の秘密を守ると誓っている。 門の向こうに別の世界があるという意匠は『太陽の光彩』の第1図ともよくにている。 アシュモール『英国の化学の劇場』版で…

『トマス・ノートンの錬金術の叙階梯式書』書評

イギリスの書店Boydell&Brewerが刊行しているEarly English Text Societyという叢書の第272巻に収められている。PMCにあった書評(リンク先でDL可能)によると…… JOHN REIDY (editor), Thomas Norton's Ordinal of alchemy, London, Oxford University Press…

トマス・ノートン氏をめぐるいろいろ

ここ数年でめきめき実用的になって(?)なんでも検索してみるととりあえずヒットするWikipediaだが、英語版では「Thomas Norton」の記事がちゃんとある。(Wikipedia:Tomas Norton)ちなみに日本語版には無い。……とかいってる奴が書けばいいじゃんか、とい…

第2回 錬金術の叙階定式書 第2序文

前回の「第1序文」についで、以下の長い「第2序文」が始まる。ところどころに、どこかで聞いたことがある警句が発せられている。というか、マイヤーが『逃げるアタランテ』でかなり積極的に援用しているテーマが、この第2序文にはてんこもりだ。 第二序文…

さてまたずいぶん間をあけてしまいましたが

さまざまなお問い合わせ&激励ありがとうございました。なんやかやと言い訳をいたすよりもシレッと続きを再開することに致します。これからは出来るだけ継続的に訳文をUPしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。m(_._)m

第1回 錬金術の叙階定式書 マイヤーの碑銘と第1序

さて象徴的言辞に満ちた『12の鍵』と、やけにプラクティカルな皮を被ったクレマー院長の間に置かれた第2論考、トマス・ノートン『叙階定式書』をお送りしていこう。なかなか本題に入れないのがまた錬金術文書の厄介な問題でもあるけれども、文書ごとの立場…

マイヤー『黄金の鼎』のイラスト

ミハエル・マイヤーの編纂した錬金術論集『黄金の鼎』は(1)バシリウス・ヴァレンティヌス『12の鍵』 (2)トマス・ノートン『我を信じよ、あるいは錬金術の叙階定式書』 (3)ジョン・クレマー『信仰告白』 の3つの、有名かつ伝説的な錬金術文書を収…

疑似科学?に関する覚え書き

錬金術文書の翻訳、なんて、すこぶる非科学的そうなテーマにどっぷり漬かりながら、普段はけっこうエセ科学批判にアンテナを立てていたりもする。疑似科学や似非科学について調べてみると、自分の持っている思いこみの傾向が、びしばしとコペルニクス的に展…

第6回 院長クレマーの告白

・・・気を取り直して第5章、いってみよう。 第5章 2ポンドの純粋で柔軟な鉛、2ポンドの純粋な錫を用意し、充分に封印した上記の陶器のなかで溶解せよ。全てを3時間ほど穏やかな木の炎に焼べよ。混合物の全体が純粋透明になるまで、鉱金属の「泡沫」は…

錬金術逍遙譚

ミハエル・マイヤー編纂の『黄金の鼎』、その一角をなす『院長クレマーの告白』ですが、第1回の冒頭に錬金術逍遙譚がありました。勢いづいて『太陽の光彩』巻末にあるトリスモシンの冒険も掲載したりしていた矢先。久しぶりに入った新刊書店でGETした「これ…

第5回 院長クレマーの告白

第4章 3の月15日ごろに、3オンスの水銀を用意しそれに半オンスの《生ける水》を加えよ。この水銀は、洗剤で浄められてよく乾かされた濾過器に5度通せ。2ポンドの鉛を溶かし込んでこれを瓶壷に注げ。それが液状になったら、そこに細い棒状の串を刺し入れ…

第4回 院長クレマーの告白

第3章 硬く澄んで一点の染みも無い8オンスの鉄鉱石を3あるいは4割、つよい木炭の火で精錬せよ。それを充分な処女の水で消すべきだが、これについては目的に必要とされるに足るだけ第2章で記されている。そして3オンスの錫を用意し、これに短時間熱を加…

第3回 院長クレマーの告白

第2章 三から四晩、睡眠から覚めた朝一番の汚れなき若者の水を3パイントになるまで採取せよ。それを毎晩、固定された石製容器に溜めよ。沈殿する澱は取り除くべきである。液体の透明純粋なところを1パイント濾過せよ。かなりの強酢を2グラス、2オンスの…

本家サイト Macrocosmの移動

管理人のISP変更のためひと月ちかくネット活動を停止してしまいました。これにともなって突然のサイト閉鎖、たいへんご迷惑をお掛けしております。とりあえずですが以下のアドレスに再びサイト公開しております。今後とも宜しくお願い申し上げます。錬金術と…

第2回 院長クレマーの告白

第1章 我らが術の生命を構成する生ける水の調合法 鮮やかで純粋なる紫紅の酒石を3オンスほど用意せよ。そこに5オンスの石油、2オンスの天然硫黄、2オンスの橙色の砒素、3オンスのラビュセヌム、2オンスの柳の木炭を加えよ。これらすべての構成要素を…

第1回 院長クレマーの告白

『院長クレマーの告白』は、あるベネディクト会の修道院に伝わるとされた術の秘奥書であり、成立年代は明かされていないものの、バシリウス・ヴァレンティヌス『12の鍵』と、トマス・ノートン『我を信じよ』とともに、『逃げるアタランテー』の著者ミハエル…

第8回 キャラクター(登場人物)について [随時更新予定]

登場人物の性格からうまれるドラマ性、という意味での内容・ストーリーはまったく重きを置かれるものではないので、キャラクターにあまり重要な意味はない。それゆえにか在る程度スターシステムを思わせるマンネリズムもあって、読者はこうした或る意味での…

A.F.SmkIIオープン仕様

けっこうまともに傭兵軍カラーをやるつもりが、オレンジの部隊章を入れてみたらなんだかMaMo本のシュトラールDCU迷彩みたいになってしまった。うーむ、まあいっか。さてそろそろデカールでも貼ってクリアー塗りますか。ついでに下地塗りをやって風情があきら…

第7回 はたらくカッパについて(ネタバレ注意)

北海の街に住むアンヌは病身の父に代わって働くため就職面接に赴くが、ひょんなことからカッパ族の末裔たちが生きる潜水艦「たこぶね」に乗り込み、まかないとして雇われ、カッパたちとともに数々の冒険に巻き込まれることになるが、買い出しで上陸した街で…

A.F.S.mkII

いちおう塗装の方針が決まったかんじ。 パイロットはフィギュアセット2からフレーダーマウスのおっさん。 シュトラールのひとなはずだけど気にしない気にしない。 頭のラインをそのままにしてしまった・・・。 ハッチ内部がこんなふうなのかどうか知らんけ…

A.F.S.mkIIとArchelon

アーケロンであまるAFSのボディをがしがし切り通してオープン仕様にする。 プラがやわらかいのでニッパとカッタだけでけっこういける。 隙間をコード類なんかで埋めてソレっぽくしてみる。 ついでに腕と足もどんどん組んじゃって、一晩つけおき洗いしたレジ…

第6回 赤タイツ男について

その濃厚さが魅力であったにせよ、クリエイタはいつまでも古い手法・形式を引き摺るわけにはいかない。読者に媚びて内容の変転にばかり気を取られた作品は時代のニーズに応えて華やかに受け容れられることがあっても根無草のそしりは免れず往々にして短命で…